現状と将来
日本の高齢者人口の増加
ご存知の通り、日本は急速に高齢者の人口が増加しています。
高齢者1人を3人(2005年実績)で支えていたのが、2030年には1.7人、2055年には1.2人で支えなければなりません。
(ご参考)
厚生労働省 全国厚生労働関係部局長会議 平成23年1月21日資料より
特に、都市部での高齢者人口の増加が目立ちます。
(ご参考)
厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第32回) 平成22年9月17日資料より
子との同居率の低下と高齢者世帯の増加が顕著
65歳以上の者とその子の同居率が低下し続けています。
同時に、そのことは「単身+夫婦のみ」の世帯が増加することを意味しています。
(ご参考)
厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第32回) 平成22年9月17日資料より
高齢者向け住宅と施設の現状
高齢者人口の増加と高齢者の「単身+夫婦のみ」世帯の増加に対して、次の通り高齢者向けの住宅の数が施設に比べて、圧倒的に少ないことが分かります。
(ご参考)
厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第32回) 平成22年9月17日資料より
それでは、高齢者向け住宅よりストックが多い施設で充分に受入れができているかというと、施設の1つである特別養護老人ホームでは約42万人の待機者います。
(ご参考)
厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第28回) 平成22年7月30日資料より
高齢者向けの住まいの割合を欧米並みの3~5%に
日本の高齢者向けの住まいの割合は、次の通り0.9%(2005年)と欧米と比べて低い状態です。
今の日本の状況は、1970年代のデンマークとよく似ています。デンマークでは、1970年代プライエム(日本の特別養護老人ホームに相当)には常に待機者が存在し、財政負担も大きかった。
この様な状況でデンマークがとった政策は、プライエムを減らし高齢者住宅を増やすことでした。
(ご参考)
このデンマークの成功を参考に、高齢者人口に対する高齢者向けの住まいの割合を欧米並みの3%~5%とする目標を設定しています。
(ご参考)
平成22年5月17日 国土交通省成長戦略会議より
時代の流れは「サービス付き高齢者向け住宅」へ
以上を背景として、「サービス付き高齢者向け住宅」の創設を盛り込んだ「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)が2011年4月27日、参院本会議で全会一致で可決、成立しました。
さらに、「所得」と「要介護度」の視点から整理すると、中間所得者層向けの高齢者住宅が絶対的に不足しています。
(ご参考)
国土交通省住宅局 高齢者住宅施策について 平成22年8月30日資料より
例えば、生活保護受給者や国民年金受給者などの低所得者層は、ケアハウス(経費老人ホーム)やシルバーハウジングが受け皿になっています。
一方、富裕層は多額の一時金を払って、有料老人ホームに入居しているケースが多く見られます。
低所得者層と富裕層の中間層(典型的には厚生年金受給者)向けの住宅が絶対的に不足しているのです。
今の現状をおおまかに言えば、中間所得者層は約42万人待ちといわれる特別養護老人ホームに入居するか高額な一時金を払って有料老人ホームに入居するか、のどちらかを選択するしかないのです。
「サービス付き高齢者向け住宅」は、絶対的に不足している中間所得者層を対象としてしていることが、上図からお分かり頂けると思います。
大きなビジネスチャンス
「サービス付き高齢者向け住宅」を新たに建設し運営するには、①土地所有者 ②建設業者 ③金融機関 ④ケアサービス提供事業者 などの協力が必要です。
建設・運営形態は、次の3つに分類できます。
- 土地所有者が建設し、ケアサービスの提供も自ら行う場合
- 土地所有者が建設し、一括でケアサービス提供事業者に賃貸する場合
- ケアサービス提供事業者が、土地所有者から定期借地権付きで土地を借りて、建設する場合
上記のうち、1は土地所有者がケアサービスの経験や知識のないまま始めてしまうと、失敗する恐れがかなり高いので、安易にやらない方が良いでしょう。
3は、ケアサービス提供事業者に資金調達力があれば、実行可能ですが現実は厳しいです。
一般的に現実的な形態は2です。
土地所有者にとって、家賃保証で経営が安定したケアサービス提供事業者に一括賃貸できれば安心です。また、ケアサービス提供事業者にとっても、建設資金を調達する必要がありません。
最後に金融機関にとっても、大きなビジネスチャンスになります。特に地域に密着している地方銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関にとっては絶好のチャンスではないでしょうか?
いずれにしても
- 土地所有者にとっては、土地の有効活用や相続税対策
- 建設業者にとっては、新たな需要の掘り起こし
- 金融機関にとっては、新たな融資
- サービス提供事業者にとっては、新たな地域への進出
と、大きなビジネスチャンスになります。
ただし、金融機関にとって一番注意しないといけないのが、介護事業者の指定取消です。指定取消になれば、売上ゼロ→資金回収困難の事態になります。
すでに積極的に動き出している金融機関があります。